芦屋国際特許事務所 ASHIYA INT'L PATENT AND TRADEMARK ATTORNEYS

審判での審尋

最近の拒絶査定不服の審判では、前置報告書への意見を提出するように審判部から審尋が来ます。審尋の添付書類は審査官の前置報告書で、”前置報告書を踏まえて審判事件を審理するので、審判請求人の意見を事前に求める”、旨が記載されています。回答が無い場合でも不利に扱うことはないとされていますが、出願人の主張を審判官に伝える方が有利でしょう。私どもは拒絶査定不服の審判で、長年に渡り特許率90%以上を保ってきました。理由の1つが、前置報告書をチェックし上申書で反論することでした。もちろん全ての事件が目標のクレームで特許された訳ではありません。


 前置報告書に関する問題として、次のことがあります。拒絶査定に対し審判請求時に補正すると、前置報告書で周知技術が追加されることがあります。前置報告書は、拒絶査定と同じ理由により特許できないとしている、と言えるのでしょうか? 次ぎに、審尋で出願人は意見を述べる機会を保証されたとして、拒絶査定の理由が前置報告書で実質的に変更されている場合でも、拒絶理由無しで拒絶審決を受けることが有るのでしょうか? 審尋のフォーマットは、拒絶査定の理由と異なる拒絶理由がある場合、必要に応じてあらためて拒絶理由を通知する、としています。従って、特許できない理由が拒絶査定と前置報告書との間で変わっていれば、原則として拒絶理由を通知するのが審判部の立場のようです。


 何を回答したら良いのでしょうか? 例えば進歩性が問題の場合を考えます。前置報告書の基本的スタイルは、審判請求時の補正で限定された事項を周知事項あるいは設計事項であると認定し、その根拠として先行技術を周知技術として引用することです。ここでの議論のポイントは、審判請求時の補正は周知事項あるいは設計事項に過ぎないのかどうかです。作用効果が無視されている、引用例と異なるものが同じもののように扱われている、周知技術が本来とは異なる形で適用されている、などの反論点を探しましょう。「前置報告書は…の点で誤っている」、これが主張できればベストの回答でしょう。


 前置報告書の判断に納得せざるを得ない場合、クレームの減縮を検討し補正案を提出するのが良いと思います。それも無理であれば、審判請求を取り下げるのが良いでしょう。ここまで努力すれば、できることはした、と考えることもできると思います。